ジフテリアは,グラム陽性桿菌であるジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)のうちジフテリア毒素産生菌による急性感染症である。この毒素が心筋や神経に作用し,心不全や呼吸筋麻痺を引き起こす。呼吸器病変のほか,皮膚病変を起こすことがある。飛沫感染や皮膚病変・分泌物との接触によってヒト-ヒト感染を起こすため,感染症法では2類感染症,学校保健安全法では第一種感染症に規定されている。国内では1999年の例を最後に報告はないが,海外ではしばしば集団発生の報告がある。
ワクチンで予防できる疾患であり,1期(3回接種および1回の追加接種),2期(11~12歳に1回接種)の接種でジフテリアの罹患リスクを95%減らすことができると報告されている。
なお,同様の症状を呈する疾患として,ジフテリア毒素を産生するCorynebacterium ulceransやCorynebacterium pseudotuberculosisによる感染症がある。いずれもヒト-ヒト感染は稀で,イヌやネコ咬傷後に発症する動物由来感染症であり,ジフテリアとは区別される。
呼吸器ジフテリアは,発熱,咽頭痛,嗄声などの症状があり,扁桃,咽頭,喉頭,鼻腔の粘膜にジフテリアに特徴的な厚い白色~灰白色の偽膜が観察される。この偽膜が広がると気道を閉塞してしまうため,気管切開が必要となることがある。また,頸部リンパ節腫脹による頸部腫脹(bull neck)を呈することがある。これらの症状からジフテリアが疑われる場合には,患者の偽膜組織や鼻腔,咽頭のぬぐい液を採取する。グラム陽性桿菌を認めた場合には,保健所を通じた行政検査(分離同定,毒素遺伝子のPCR法による検出,ジフテリア毒素の検出)を行う。
皮膚ジフテリアでは,うろこ状の発疹や境界明瞭な潰瘍がみられる。病変部位から菌を分離して,同定する。
また,治癒後にジフテリア毒素による各種臓器障害(心臓,神経など)が起こり,致死的となることがある。
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