厚生労働省は10月27日の社会保障審議会医療保険部会に、人材確保と働き方改革の推進を2024年度診療報酬改定の重点課題にすることを提案し、概ね了承された。
医療保険部会と医療部会では現在、次期改定の基本方針に関する検討が進行中。同省はこの日の医療保険部会に、基本方針を構成する改定の「基本認識」、「基本的視点」、「具体的方向性」について、これまでの議論を踏まえて整理した案を示した。
このうち改定の基本的視点には、(1)現下の雇用情勢を踏まえた人材確保・働き方改革等の推進、(2)ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進、(3)安心・安全で質の高い医療の推進、(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上―を据え、(1)を重点課題とすることを提案した。
さらに(1)の具体的方向性の例には、医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組みのほか、働き方改革に向けての取り組みとして、①各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するための労務環境の改善、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進、②業務の効率化に資するICT利活用の推進、③地域医療の確保及び機能分化を図る観点からの必要な救急医療提供体制等の確保、④医療人材及び医療資源の偏在への対応―などを掲げた。
(1)を重点課題にすることに反対する意見はなかったが、佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は、「重点課題が人材確保や働き方改革だけというのは保険財政に対する危機感が乏しいと言わざるを得ない」と述べ、(4)も重点課題に位置付けることを要望した。
一方、医療関係者の委員からは、「次期改定には物価上昇や賃金の上昇が反映されるようにしてほしい」(猪口雄二委員・日本医師会副会長)、「世の中が賃上げに舵を切っている中で医療だけ賃金を上げられない状況は避けねばならず、診療報酬かどうかは別として賃上げのための一定程度の原資が必要だ」(池端幸彦委員・日本慢性期医療協会副会長)など、処遇改善の原資確保のための財政的手当を求める声が相次いだ。