財政制度等審議会(会長=十倉雅和住友化学会長)は11月20日、「2024年度予算編成等に関する建議」をとりまとめ、鈴木財務相に提出した。24年度予算編成の課題として社会保障をトップで取り上げ、診療報酬改定について重点的に記述。特に診療所の報酬単価については「5.5%程度引き下げるべき」と明記した。さらに診療所の地域偏在解消のため、過剰地域の1点単価を引き下げることなどを建議。総じて診療所にターゲットを絞って歳出改革を促す内容となっている。
建議のうち社会保障を取り上げた部分では、まず総論で少子化対策に言及。6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」に盛り込まれた「加速化プラン」の財源を確保するためには、徹底した歳出改革が必要であることを強調している。
続いて診療報酬改定を取り上げ、財務省が実施した機動的調査から、診療所の22年度の経常利益率が8.8%だったことを繰り返し強調。「診療所のきわめて良好な経営状況等を踏まえ、診療所の報酬単価を適正化する等により、現場従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当である」と建議。このため診療所の報酬単価について、「初診料・再診料を中心に引き下げ」、経常利益率が全産業やサービス産業平均(3.1~3.4%)と「同程度となるよう、5.5%程度引き下げるべきである」と主張している。
医療法人の経営情報の「見える化」についても触れ、24年度診療報酬改定で、従事者の処遇改善のための加算の算定に当たり、「職種別給与等の提出の要件化を行うべきである。その上で、その提出の義務化を行うべきである」としている。
さらに、診療所の地域間の偏在対策についても言及し、「将来的に地域別の報酬体系への移行を視野に入れつつ、当面の措置として、診療所過剰地域における1点当たり単価の引き下げを先行させ、それによる公費節減等の効果を活用して医師不足地域における対策を別途強化すべきである」との考えを打ち出した。
一方、病院については医師の働き方改革や、2年前に実施された看護職員等の処遇改善の検証などに「適切に対応していく必要がある」と指摘。特に医師の働き方改革については、「地域医療介護総合確保基金を活用したさらなる支援について、今後の予算編成過程において検討し、必要な措置を講じるべき」としている。
24年度は介護報酬、障害福祉等サービス報酬の改定も行われる。建議では、介護報酬については「改定率を単に高くしただけでは問題の解決にはならない」として、経営者を含めた所得格差是正に踏み込む必要があると記述。障害福祉等サービスについても「総額予算を抑制する取り組みが不可欠」と強調している。