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恥ずかしいお買い物 [なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(83)]

No.4788 (2016年01月30日発行) P.76

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

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  • 30代の半ば、効果が絶大という触れ込みで今もよく売れている毛生え薬が米国で発売された。留学中の親切な後輩が送ってくれた。確かに効いた。毛が増えるというほどではないが、朝起きると、枕についている抜け毛が減るようになった。ちょっとうれしくて、けっこうな間、愛用していた。

    しかし、ある日、ふと気がついた。はたして、人生において抜け毛を防ぐメリットがあるのだろうかと。自覚的には効いているとしても、他覚的には着実にハゲが進行している。どう考えても、延々と毛生え薬に金を使う意味があるとは思えなくなった。そして、潔く生きていくことに決めた。

    毛生え薬を買うのが恥ずかしかったかというと、そんな経験はしたことがない。見れば毛が薄いのがわかるし、毛生え薬はそのためにあるのだから、そのような人が買うのは当然である。店員さんもそれなりに気を遣って、毛生え薬を買う客の頭に目線をやったりしないだろう。

    では、何を買うのが恥ずかしいのか。たとえばエロ本である。大昔、エロ本を買おうとしたら、本屋のおやじに「高校生はこんな本を買ってはいかん」と注意された。それやったら売るなよ、と思ったが、素直にしたがった。いかん、しょうもない話を思い出してしもた…。話を戻そう。

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