時代は令和に入り、医療の「大転換期の大詰め」を迎えている。このような時代の全体思考 の一助になればと考え、話題を提供したい。 前回までのNo.5208,No.5214,No.5218に加え、今回は「医療チーム内での年代差を超える」概念を取り上げたい。
いわゆる団塊の世代の人口は患者側だけでなく、医療介護提供側にも存在し、医療介護提供側も、高齢化する。チーム内外での年代差問題である。
この事実は、老中群からは「最近の若いもんはすぐ起業だM&Aだと、医療介護の本質を勘違いしている」とか、逆に若者群からは「既得権益にどっぷりと浸かっている人たちは、口では若者が欲しいというが、言うことを聞いてくれる都合のいい若者が欲しいだけで、本当に仕事を任せてくれたり決定権を譲渡したりする気がない」とか、お互いの立場からの意見が平行線をたどることが多い。「最近の若者」問題と、「最近の老害」問題である。
おそらく医療の世界だけの問題ではないが、本来協力して打破できれば、熟年の知恵と若手のパワーが合わさり強力な推進力になるにもかかわらず、様々な問題を複雑化させる。
これは組織内だけでなく、父子や母娘などの家族間でも医院継承時などに医療方針が違い、大揉めしている事実が散見されるため、最小規模の集団でも問題となる。
しかし、よく考えると「今の若者は」とか、「団塊の世代は」とかいうセリフは、歴史全体を見てみるとはるか昔から繰り返されているようだ。
ある文献1)では、人類ははるか昔から、「最近の若いもんは」という愚痴をこぼしていると指摘されている。その論文では、1624年の聖マーガレット教会のトマス・バンズ牧師の「かつての若者はこんなにも生意気ではなかった。(今)先人は嘲り笑われ、名誉ある人は非難される」という言葉が引用されており、著者のカリフォルニア大学サンタバーバラ校心理学部John Protzko教授は「人類は少なくとも2600年にわたり、『最近の若者』に対して同じような不服を申し立て続けている」と述べている。
また日本でも、古文の徒然草に同様の条りがある。
とどのつまり、同じ時代に生きている医療チーム内の年齢差からくるマウントや愚痴や老害議論の問題は、そもそも人類が持つ恒久的な問題の可能性が高い。
令和時代においても、構えることはあっても、まともに取り合うこと自体があまり意味をなさないとして、年代差を当然のように超えての老若チームを形成する勇気が必要だ。
前回と合わせて、「『正常時』でも『有事』でも対応でき」「年代差をものともしないような老若」医療チームが令和時代に求められてくると考えている。
【文献】
1) Protzko J, et al:Sci Adv. 2019;5(10):eaav5916.
守上佳樹(よしき往診クリニック院長、一般社団法人KISA2隊OYAKATA)[世代間格差][大転換期][チーム医療][KISA2隊]