【質問者】中山秀紀 旭山病院精神科医長
【依存症等の治療へのモチベーションは未解決の重大な問題である】
大麻に限らず,依存症等の治療へのモチベーションを高めることは解決していない重大な問題です。かつて,アルコール依存症の精神病理として,依存症を認めない「否認」の問題が指摘されました。否認のために酒をやめられないということで,父権主義的な関わりがなされ,逆に否認を強めた歴史がありました。基本的には,他の物質依存も同様であると考えられます。
最近では,「動機づけ面接法」が注目され,モチベーションをどのように治療的に扱うかについて実践が試みられています。また,直接的に依存症を治療するのは困難であることも少なくないので,間接的に依存症に関連する弊害を減弱する目的で「ハームリダクション」の概念が様々な場面で導入されています。
ここまで依存症等全般について述べてきましたが,以下に大麻の特殊性による治療の困難さについて説明します。大麻使用を強化する理由として,①米国の一部の州やカナダなどが嗜好品として認めており,こうした国が増える傾向にあること,②大麻成分の一部が医療用に開発されていること,③大麻の依存性はあまり強くないという論文が存在することが挙げられます。さらに最大の問題は,④ヘロイン,コカイン,覚醒剤の使用を礼賛することはないものの,大麻を礼賛するサブカルチャーや有名人の使用が多数みられることでしょう。
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