中央社会保険医療協議会は7月3日に開いた総会で、今年10月から適用される「医療DX推進体制加算」のマイナ保険証利用の実績要件についての議論を開始した。診療側は医療DXの推進に積極的に取り組む施設の裾野を広げるためにも、高い水準での設定は避けるべきだとの認識を表明。マイナ保険証利用促進の取り組みが加速するよう、高い水準での設定を求める多くの支払側委員と意見が対立した。
総会には6月下旬に実施されたマイナ保険証の利用状況などに関するヒアリング結果が報告された。医科は病院、診療所各10施設が対象になったが、マイナ保険証の利用率は、①病院:最低0.3%、最高72%、②診療所:最低0.1%、最高83%―と施設間格差が大きいことが判明。
マイナ保険証の利用促進への取り組み状況では、患者への積極的な声かけや利用メリットの説明が利用率向上につながっている一方で、取り組み効果の発現に時間がかかることや、声かけ等の取り組みを行ってもマイナ保険証の持参につながらない事例があることが確認された。
これを受けて診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「まずは裾野を広げることが最も重要だ。加算届出の足枷となるような高い利用率の設定は医療DX推進の大きなブレーキになってしまうため、断固反対する」と強調。池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)も「ちょっと頑張れば手が届くところ。平均値で設定するのではなく、最低限をどこまで上げるかが検討の際の基準になるのではないか」と同調した。
これに対して支払側は、診療側の主張に理解を示す委員もいたが、松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「頑張れば相当程度まで利用率を伸ばすことが可能だと思う。目標となるような高い基準を設定すべきだ」と反論。鈴木順三委員(全日本海員組合組合長代行)も「加算をするのに相応しい高い水準に設定すべきだ」と述べた。
一方、「医療情報取得加算」(旧「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」)は、今年12月の健康保険証の新規発行終了を踏まえ、見直しの検討を進めることになった。この加算を巡っても、廃止を求める支払側と存続を求める診療側の意見が激しく対立している。