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粘液囊胞・ラヌーラ[私の治療]

No.5231 (2024年07月27日発行) P.53

齋藤寛一 (東京歯科大学口腔腫瘍外科学講座講師)

登録日: 2024-07-28

最終更新日: 2024-07-23

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  • 粘液囊胞は,唾液の貯留によって粘膜表面に囊胞様の腫瘤を形成する偽囊胞である。その成因には2種類あり,損傷を受けた唾液腺から漏出した唾液が結合組織内に貯留して生じたものを溢出型と言い,唾液腺導管が何らかの原因で閉塞し導管が拡張して生じたものは停滞型と言われる。圧倒的に溢出型のほうが多く,停滞型は18%以下にすぎない。また,溢出型は30歳以下の若年者に,停滞型は40歳以上に多い。
    ラヌーラは,舌下腺から溢出する唾液が原因となって,口底部の片側に生じる大きな粘液囊胞である。舌下腺由来の唾液が顎舌骨筋より上方の口底部に貯留するものを舌下型ラヌーラ,顎舌骨筋の下方の顎下腺に貯留するものを顎下型ラヌーラと呼ぶ。

    ▶診断のポイント

    【症状・検査所見】
    〈粘液囊胞〉

    大きさは5mm程度の無痛性の境界明瞭な半球形の腫瘤で,青味を帯びた透明感のある色調をしている。触診では,圧痛はなく弾性軟で波動を触知する。深在性の粘液囊胞では,色調は粘膜色で,指先に境界明瞭な球形の腫瘤を触知し,可動性がある。誤咬など機械的刺激で潰れて,粘稠な唾液が流出してしぼむ。またその後,経時的に唾液が貯留し再発する。このように自潰と再発を繰り返すのが特徴である。

    〈ラヌーラ〉

    舌下型ラヌーラは,口底部の片側性の腫脹で,境界明瞭な半球形(ドーム状)をなし,圧痛はなく波動を触知できる。透明感のある青味がかった色調を呈するが,赤味がかるものもある。増大すると舌を挙上し,構音障害,嚥下障害および呼吸障害を呈することがある。片側のものが反対側まで正中を越えて増大することもある。

    顎下型ラヌーラは,顎下部がドーム状に腫脹し,無痛性,弾性軟,波動を呈する。通常,舌下小丘の顎下腺導管開口部からは,正常な唾液流出が認められる。舌下型から顎下型に移行することもあり,同時に生じることもある。

    診断には,MRIのT2強調画像が有用である。特に顎下型ラヌーラは,顎下腺腫瘍,鰓囊胞,リンパ管腫,悪性リンパ腫などとの鑑別にMRIが重要である。超音波検査も鑑別に役立つ。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    粘液囊胞は,外科的に摘出術を行う。

    ラヌーラは,舌下型と顎下型で治療法が異なる。舌下型では,開窓術と舌下腺摘出術の2つの方法があるが,第一選択としては,手術侵襲の低い開窓術を行うことが多い。一方,顎下型では,舌下腺摘出術が第一選択となり,開窓術は適応にはならない。

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