顎骨に生じる炎症の総称で,急性,慢性,感染性,非感染性,放射線性顎骨壊死,薬剤関連顎骨壊死などに分類される。歯性感染症などの細菌感染が主な原因であるが,小児などにみられる非感染性の顎骨骨髄炎や,放射線性顎骨壊死,骨修飾薬や分子標的治療薬による薬剤関連顎骨壊死は,感染症に対する治療だけではコントロール困難である。
顎骨の疼痛や排膿が主訴となる場合が多く,画像検査で顎骨の破壊や吸収を伴う。CTだけでなくMRI検査が診断において重要となる。
顎骨骨髄炎の分類によって治療方針は大きく異なる。
歯性感染に伴う顎骨骨髄炎では,消炎と抗菌薬の投与,原因となる歯の抜去や感染巣の除去を順に行う。ただし,慢性下顎骨骨髄炎は膿瘍を形成しない場合も多い。感染源となる細菌叢は口腔内連鎖球菌が主体である場合が多いため,ペニシリンをエンピリックとして用いることが多い。細菌培養の結果でデ・エスカレーションしていく。ただし,経口ペニシリンのバイオアベイラビリティは低く,急性症状の強い場合は,入院下での静注が望ましい。慢性下顎骨骨髄炎では,再燃の予防として2週間以上の静注が重要である。
放射線性顎骨壊死では,急性症状の消炎を除き,抜歯や腐骨除去などの外科的なアプローチは極力回避するのが無難で,洗浄や抗菌性洗口液による口腔内保清の徹底が重要となる。
薬剤関連顎骨壊死については,ステージごとに治療指針が異なるが,近年では外科的なアプローチのほうが治療成績が良いとされている。
一般的に保存的治療としては,抗菌薬の投与や抗菌性洗口液による含嗽,病巣の洗浄があり,外科的治療には,腐骨の除去,皿状形成,皮質骨除去がある。その他のオプションとして高圧酸素療法などがある。
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