株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

顎骨腫瘍(エナメル上皮腫)[私の治療]

No.5232 (2024年08月03日発行) P.42

齋藤寛一 (東京歯科大学口腔腫瘍外科学講座講師)

登録日: 2024-08-04

最終更新日: 2024-07-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • エナメル上皮腫は,全歯原性腫瘍の中で発生頻度が最も高い。組織学的には良性に分類されるが,多くは局所浸潤性を有し,再発も多く,稀ではあるが悪性転化も報告されている。好発年齢は,通常型では30〜40歳代に多く,単囊胞型は10歳代をピークに若年者にみられる。好発部位は,80〜90%が下顎で,さらに大臼歯部と下顎枝部が70%を占める。2017年のWHO分類の改訂版で,エナメル上皮腫は,通常型のエナメル上皮腫(充実型,多囊胞型,類腱型を含む),単囊胞型,周辺型に大別された。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    エナメル上皮腫は,発症初期には自覚症状がないことが多く,歯科治療の際に撮影されたX線画像上で偶然発見されることも多い。自覚症状や他覚的な病的所見は,ある程度病変が進展するまではほとんど観察されない。進展例では,顎骨の膨隆による顔貌の非対称が観察される。

    口腔内所見として,歯の移動,萌出障害,歯列不正,歯根の鋭利な吸収や歯の動揺などがみられる。下顎では,下歯槽神経血管束を圧迫して下唇やオトガイ部の知覚鈍麻がみられることもある。

    触診で,菲薄化した皮質骨を羊皮紙様感として触知でき,囊胞様で骨外に進展した場合は波動を触知する。

    【検査所見】

    診断に有用な画像は,パノラマX線画像,CT,MRIなどである。画像所見では,単房性あるいは多房性の境界明瞭なX線透過像を認める。埋伏歯を伴うことが多い。腫瘍に接する歯根は,ナイフでカットされたように吸収される。

    本腫瘍と類似した画像所見を呈する疾患は,他の歯原性腫瘍と歯原性角化囊胞,含歯性囊胞,歯根囊胞などの囊胞が挙げられ,鑑別を要する。

    生検は術前の診断確定に最も有効で,良悪性を含めた組織型に関する情報が得られるので必ず行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療方針の立案にあたっては,本腫瘍が良性ながら顎骨浸潤,発育し,外科治療後の再発が多いことから,準悪性腫瘍として取り扱うことが勧められてきた。

    治療法は,根治的外科療法と顎骨保存外科療法にわかれる。

    残り1,179文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連物件情報

    もっと見る

    page top