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口腔癌[私の治療]

No.5222 (2024年05月25日発行) P.54

鈴木大貴 (東京歯科大学口腔腫瘍外科学講座)

登録日: 2024-05-28

最終更新日: 2024-05-21

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  • 口腔に生じる悪性腫瘍の総称を口腔癌と呼ぶ。8~9割が口腔粘膜に由来する扁平上皮癌であるが,口腔には大小の唾液腺も多く存在するため,唾液腺癌も少なくない。また,非上皮性の腫瘍など,他臓器に比べ,腫瘍のバリエーションが多い。また,稀ではあるが,遠隔転移が口腔内に生じる,転移性腫瘍の場合もある。
    一般的に口腔癌は,口腔扁平上皮癌のことを指す。頻度の最も高い舌癌をはじめ,歯肉癌,頰粘膜癌に加え,口腔底(舌と下顎の前方付着部)に生じる口底癌や,顎骨病変が原発として考えられる歯原性癌など,解剖学的にもバリエーションが多く,治療も複雑になることが多い。

    ▶診断のポイント

    病理組織検査,画像検査(CT,MRI,PET-CT)がステージの決定には必須である。表在型の早期がんは,画像検査で指摘されないこともある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    口腔癌一次症例における治療の柱は,手術療法と放射線療法である。化学療法については,補助的に用いる。

    手術療法は,早期がんで腫瘍とその周囲組織を安全域とした,部分切除を行う。ただし,口腔粘膜は非常に菲薄であるため,隣接する顎骨や筋などに接するような場合は,これを安全域として合併切除する必要がある。切除により機能的,整容的に障害が生じると考えられる場合,何らかの再建術を併用する。舌であれば1/3ないし半側切除以上では皮弁・筋皮弁による再建を行い,機能障害を最小限にとどめる。歯肉癌であれば,区域切除以上で金属プレートや硬性再建の併用を検討する。

    一次症例に対する放射線治療は,2Gy/日程度の照射を30~35回程度行う。60Gy以上を一般的に根治線量と考える。化学療法の併用は放射線単独よりも予後を改善することが知られており,シスプラチン(CDDP)やアービタックス(セツキシマブ)の併用が許容される場合は,併用が推奨される。
    口腔癌の化学療法については,単独で根治的治療にはなりえないため,術前の化学療法,放射線治療の上乗せとしての化学療法,切除不能再発・転移に対する化学療法として用いる。

    >関連WEBコンテンツ「口腔の異常のみかた〜がんを見逃さないコツ

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