クリミア・コンゴ出血熱(Crimean-Congo hemorrhagic fever:CCHF)は,ナイロウイルス科オルソナイロウイルス属に分類されるCCHFオルソナイロウイルス(CCHFV,CCHFウイルスと呼ばれていた)による感染症で,ヒトはCCHFVを有するマダニに咬まれたり,ウイルス血症を伴う動物(患者を含む)の体液に直接接触したりして感染する。アフリカ,欧州,中近東,中央アジア,南アジアで流行する。日本では流行していない。
流行地を訪問した人,流行地から来日した人が,発熱などの感染症状を呈し,ほかに原因が認められず,さらにマダニに咬まれたり,患者やヒツジなどの家畜に直接的に接触したりした場合にCCHFも鑑別診断に挙げる。
激しい頭痛,めまい,吐気,発熱,咽頭痛,頸部痛,腹痛などの症状を呈する。出血症状は発症後3~6日経過した頃に現れる。皮膚や粘膜の点状出血から始まり,広範囲の斑状出血,消化管や尿路の出血へと移行する。重症例では多臓器不全,ショックにより死亡する。多数の死亡例では歯肉からの出血,斑状出血,吐血,下血,下痢,精神錯乱,意識混濁,傾眠傾向が認められる。
CCHFは「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)により1類感染症に指定されており,直ちに最寄りの保健所に届け出る。CCHF患者は多くの都道府県に設置されている1類感染症患者に対応可能な病院に搬送することが必要となる。
アフリカや中南米からの帰国者であれば,マラリア,デング熱(デング出血熱)などの熱帯亜熱帯地域で流行している感染症を鑑別疾患として考える。
CCHFには特異的な治療法はない。リバビリンやファビピラビルはin vitroにおいてCCHFVの増殖を抑制し,感染動物モデルで一定の治療効果が確認されているが,ヒトにおけるCCHFに対する治療効果は確認されていない。そのため,対症療法が基本である。
現状では,CCHF患者に対してファビピラビル治療を実施できる環境は整備されていない。
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