No.5241 (2024年10月05日発行) P.64
小倉和也 (NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)
登録日: 2024-09-17
最終更新日: 2024-09-17
厚生労働省が「新たな地域医療構想を通じて目指すべき医療について」を発表した。地方では既に、明らかになっている少子高齢化からくる高齢者の救急搬送の増加や在宅医療の急激な需要増などが、2040年にかけて大都市圏でもピークを迎える。地方ではさらに人口減少が進むことから、国民の生活を支えるための新しい医療の方向性が求められている。
コロナ禍がその縮図を示したように、多くの中核市規模以下の都市や町村部では既に、医療・介護の資源が不足している上、今ある資源も十分に活用されていない。また、一部機能していても効率化や連携が不十分なため、地域全体のシステムとして機能せずに疲弊している。
中でも特に深刻なのは人材の不足であろう。介護人材については国全体として不足しており、ICTなど技術の活用も進めつつ、海外からの人材をいかに引き寄せるかも含めた労働人口の減少への対策や人口減少そのものへの長期的な対策が根本的には必要だろう。
地方の医療人材の不足に関しては、偏在によるところが大きく、大都市への偏在や医師の特定の診療科への偏在を是正するため、思い切ったインセンティブによる誘導や、地方での診療や生活を行いやすくするための支援も必要だろう。
これらをすぐ始めたとしても、すぐに地方の危機を回避することは難しい。既に頑張って支えてきた医療機関も限界に達しており、現在ある資源を十分に活用し、機能している医療・介護機関の破綻や撤退を防ぐ必要がある。
そのためには、コロナ禍で示されたオンライン診療の部分的規制緩和など、効率化を支援する規制緩和を地域の実情にあわせて実施することや、一部の包括的算定要件を地域で孤軍奮闘している医療機関の実情にあわせてゆるめるなどの配慮も必要かもしれない。医療・介護資源も社会的インフラであると考えれば、それらの対策により新たな人材を誘導することは、国民の生活を守るため検討に値するのではなかろうか。
小倉和也(NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[少子高齢化][人材不足]