前稿(No.5242号)では、高年齢労働者の安全管理の重要性について解説した。本稿では、高年齢者就業の主なステークホルダーとして安全管理についても課題を抱えているシルバー人材センターについて紹介する。
シルバー人材センターとは、原則60歳以上の健康で働く意欲があり、シルバー人材センターの趣旨に賛同した高齢者を対象に、働くことを通じて生きがいを得るとともに、 地域社会の活性化に貢献する互助会員組織である。
その沿革は、1975年、東京都において「高齢者事業団」が設立されたことに端を発する。同事業団は、「自主・自立、共働・共助」の理念の下に、「一般雇用にはなじまないが、高年齢者がその経験と能力を生かしつつ、働くことを通じて社会に貢献し、 生きがいを得ていく機会を確保する」ことを主たる目的とするものであり、同事業団の設立を契機として、全国各地域に広まった。その後、名称や組織の変更があり、1986年には「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の成立によりシルバー人材センター事業が法制化され、名称を「社団法人全国シルバー人材センター協会」に変更、同法に基づく法人として労働(現厚生労働)大臣の指定を受けた。さらに2012年、「公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会」と改称し、現在に至っている。
シルバー人材センターは、原則として市(区)町村単位に置かれており、基本的に都道府県知事の指定を受けた公益法人である。
シルバー人材センターでの働き方は「生きがいを得るための就業」を目的としているため、一定した収入(配分金)の保障はないが、全国平均で月8〜10日就業した場合、月額3〜5万円程度である。
シルバー人材センターは、地域の家庭や企業、公共団体などから請負または委任契約により仕事を受注し、会員として登録した高年齢者の中から適任者を選んでその仕事を遂行する。
2023年度の全国の事業実績について、契約金額は年間3141億円、団体数1341団体、加入会員数は67万6756人(男性44万317人、女性23万6281人)に上る。ピーク時の2009年の79万1859人以降、定年制雇用の延長などで会員数は減少傾向にあるが、地域・社会活動への参加に対して消極的な傾向にある男性の社会参加・社会貢献の機会としては地域包括ケアシステムにおいても依然として重要なステークホルダーと言える。
次稿では、都内のシルバー人材センターを対象に筆者らが実施した調査研究の成果をもとに労災事故の実態や対策について紹介したい。
藤原佳典(東京都健康長寿医療センター研究所副所長)[高齢者就労][健康]