2025年1月8日、第1回セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会(以下、「検討会」)が開かれた。セルフメディケーション税制やスイッチOTCの普及推進環境を整備するための会議で、厚生労働省により4年ぶりに再開された。
私は現在、日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会のOTC医薬品分科会の分科会長を務めている。この関係でこの検討会の委員として出席した。
第1回の検討会ではこのOTC医薬品分科会でこれまで検討してきたことを紹介した。ポイントは以下の3つである。
医療用医薬品と同じ成分のスイッチOTCが増えてきた。現在93成分。これからますます増えるだろう。このため問題になるのが医療用医薬品とOTC医薬品の間の重複服用だ。バイアスピリン、ロキソプロフェンナトリウムなどの重複服用が実際に問題になっている。
こうした重複服用の検出には、現在の医療用医薬品のお薬手帳にOTC医薬品を統合したお薬手帳の電子版をつくることだ。これで重複服用の検出や警告ができる。また、この統合型の電子お薬手帳からOTCのセルフメディケーション税制の申告もできるようになればいっそう便利だ。
生活習慣病薬のスイッチOTC化を検討すべきだ。その要件は2つ、長期リフィル処方による安全性確認と、スイッチ後の要指導医薬品への留め置きだ。
今、横須賀にある衣笠病院の外来でアトルバスタチン単剤の90日間3回リフィル処方と、薬局における自己採血によるコレステロール値チェックを組み合わせた臨床試験を行っている。目的は生活習慣病薬の長期リフィルの安全性の確認だ。90日間3回リフィルだと270日間を薬局の薬剤師の手で管理することになる。いまのところ薬剤師に任せても安全性に問題はない。こうしたことからアトルバスタチンのスイッチOTC化も可能と思う。
しかし、OTCの課題は、スイッチ直後3年は要指導医薬品として対面での薬剤師の介入が入る。それを過ぎるとネット販売も可能となる。このため生活習慣病薬では3年を超えても要指導医薬品に留め置く措置が必要だ。これが可能になれば、アトルバスタチンのスイッチOTC化も問題なく行えるだろう。
OTC分科会では保険者によるOTC普及のための切り替え通知の効果検証を行っている。今年も花粉症の時期が近づいている。花粉症の時期になると初診外来は新患でごった返す。次から次へと花粉症の患者が訪れて花粉症薬の自動販売機状態だ。
こうした花粉症の季節に備えて、保険者からOTCへの切り替え通知やヘルスケアポイントで、加入者のOTCへの切り替えを促してほしい。医師としても花粉症薬のOTCへの切り替えに患者説明などで協力したい。花粉症薬のOTC化は保険者の役割だろう。
武藤正樹(社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事)[ジェネリック医薬品][OTC医薬品]