子宮頸がんなどを予防するHPVワクチンは、本来、小学校6年生〜高校1年生の女性を対象とした定期予防接種ですが、1997年度生まれまでの世代は、国が積極的勧奨を差し控えていた影響により接種率が低いため、2024年度末まで「キャッチアップ接種」として特例で、無料で接種できる期間が設けられています。
もともとは、2022〜24年度の3年間がキャッチアップ接種の期間とされ、2025年3月末までの接種が公費助成の対象、となっていました。
標準的な接種スケジュールでは、約6カ月かけて3回接種するため、3回すべてを自己負担なしで接種するためには2024年9月までに、短縮スケジュールで接種するとしても、11月までには1回目を接種する必要(No.5244)がありました。
そのため2024年夏頃には「9月中に接種を開始しましょう!」との呼びかけが広まって、かけこみ接種が急増し、11月以降HPVワクチンに出荷調整がかかる事態となりました。
HPVワクチンは、生産から流通までに1年前後の期間がかかるとされており、需要が急に増加したからといって、すぐに供給量を増やせるわけではありません。
完全に不足していたわけではないのですが、医療機関やタイミングによっては、希望者が接種できない、という事態に陥ったこともあり、HPVワクチンのキャッチアップ接種期間が条件つきで延長されることとなりました。
今の高校1年生〜1997年度生まれの女性は、2025年3月末までに1回以上接種をしていれば、残りも2026年度中は助成されます。
HPVワクチンは、何歳になっても接種したほうがよい、というタイプではなく、なるべく若いうちに接種するほうがより有効であるため、ご本人のためにも、これ以上猶予を延長するのではなく、この3月末までには希望される方に、なんとか1回目を接種して頂けるよう、周知のほどご協力よろしくお願い致します。
助成期間延長についても、安全性についても、まだ知らない当事者の方はたくさんおられます。高校1年生〜1997年度生まれの女性を診察する機会のある先生方、「HPVワクチンはもう接種しましたか?」とお声かけ頂けますと幸いです。その一言が、将来、子宮頸がんからその患者さんを守るかもしれません。
稲葉可奈子(産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)[キャッチアップ接種][HPVワクチン][子宮頸がん]