日本医師会会長の松本吉郎氏は3月5日の定例記者会見で、高額療養費制度の自己負担限度額の見直しを巡り、財務省が主張する社会保障関係費のシーリングの撤廃を主張した。
松本会長は「高額療養費制度は医療におけるセーフティネットであり、一貫して患者に過度な負担を強いることがないように丁寧な制度設計を常に求めてきた」と日医の主張を改めて強調。現行制度のまま「見直さずに済むならそれに越したことはない」とした上で、「高額療養費制度の自己負担限度額の見直しが迫られているのは、物価と賃金が上昇する中で、財務省が主張している社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制するというシーリングの考え方に起因している。これが一番の問題点でシーリングを撤廃すべき」と訴えた。
引上げの議論に当たっては、「患者本人は生活や人生に直結するため自己負担は増えてほしくないと考える一方、一般国民は保険料は下げてもらいたい、できるだけ安い方がいいと考える」との前提に立つことが重要とし、「社会保障は病気になった人を社会全体で支える制度であり、医療費の財源については、国民全員で十分に議論する必要がある」と指摘した。
高額療養費の自己負担限度額引上げを巡っては東京都医師会が5日、引上げの撤廃を求める緊急声明を公表していた。この点について松本会長は、「高額療養費制度は、持続可能性と患者負担を最小限にとどめるという絶妙のバランスの上に成り立つ考え方だと思う。すべてが決定したわけではないので、見直しも含めてこれからの議論だと思っている」と述べ、日医のスタンスを示した。