(概要) 厚労省は2025年を見据えた慢性期医療と医療提供体制のあり方について検討を開始した。療養病床の人員体制や施設基準などについて、年内をメドに意見を取りまとめる。
病床削減の方向性が示されている療養病床をはじめ、慢性期ニーズに対する医療・介護体制改革に向けた議論が10日、厚生労働省の「療養病床の在り方等に関する検討会」で始まった。療養病床は医療法に規定される病床区分で、「医療療養病床」と介護保険が適用となる「介護療養病床」に区別される。
改革に当たっては、医療療養病床では在宅医療や介護へのシフトに伴う入院受療率の地域差是正、2017年度末に廃止予定の介護療養病床については老人保健施設への転換を含む受け皿の整備などが柱となる。厚労省の二川一男医政局長が、検討会の冒頭で「施設類型の見直しを含めた政策の選択肢を提示してほしい」と挨拶したように、提供体制の抜本的な改革が求められているところだ。
●入院受療率は最大で5倍の地域差
医療療養病床については、地域医療構想ガイドラインで慢性期の医療需要を「患者数のうち一定数は在宅医療等で対応するものとして推計する」方針を明示している。これを踏まえ、政府の専門調査会は2025年の慢性期の必要病床数を13年の34万床から6.5万床減の27.6万床と推計。在宅で対応する患者数は30.6万人とされた。都道府県別では40都道府県が減床、山口、高知、佐賀、鹿児島の4県にいたっては現在の半数未満という厳しい結果となった。
療養病床の入院受療率(人口10万人当たりの入院患者数)については、概ね西日本で高い傾向にあり、全国最大の高知県(391)と最小の山形県(81)で約5倍の差がある。先の4県はいずれも全国平均を大きく上回っており、これらの地域では病床削減に伴い在宅や介護サービスの充実が重要になる。
一方、入院受療率の地域差については、地域により現在の病床数や在宅・介護の充実度合が異なることから、鈴木邦彦委員(日医)が「地域特性を反映したもので尊重すべき」と指摘。しかし地域差の妥当性を判断するには、現状の療養病床の報酬が包括点数のため診療行為を分析できない点が課題だ。
検討会では厚労省が「慢性期医療のあり方」(別掲)を例示した。14年度改定で療養病床もデータ提出加算の対象となったことにより、今後は一定規模の診療データが集積される。データ分析を踏まえ、実際にどのような医療が提供されているかを検証した上で制度設計する必要がある。
●老健への転換「無理筋」との指摘も
介護療養病床の扱いも課題の1つだ。老健施設などへの転換が進んでいない現状を踏まえ、17年度末まで転換期限が延長され、15年度介護報酬改定では「療養機能強化型」が新設。介護療養病床は15年現在も6.3万床存在しており、かつ高齢化に伴い医療ニーズの高い入所者の割合が増加しているため、老健への転換促進は「無理筋」との指摘もある。
さらなる転換期限の延長や、同様に廃止が噂される看護配置25対1の医療療養病棟を含めた施設類型の統合・再編が、ポイントとなりそうだ。
【記者の眼】慢性期の入院受療率を考える時、「医療区分2と3が8割以上」の療養病棟20対1と25対1では患者像が大きく異なるため、区別する必要があるのではないか。また、多くの25対1が急性期とのケアミックス病院であり、施設類型の再編には丁寧な議論を求めたい。(T)