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「大学が全医師の異動を生涯把握」提言 - 日本医師会・全国医学部長病院長会議 [医学部新設問題]

No.4766 (2015年08月29日発行) P.7

登録日: 2015-08-29

最終更新日: 2016-11-24

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(概要) 日医と医学部長病院長会議は19日、すべての医師の異動を生涯にわたって把握する「医師キャリア支援センター」を大学に設置することを盛り込んだ提言の骨子を発表した。

日本医師会と全国医学部長病院長会議が発表したのは『医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言』の骨子。骨子では新たな医学部設置の差し止めや医学部入学定員の削減も求めており、医学部新設構想への対案と位置づけられる。近く医学部入学定員の議論が始まることを見越し、提言取りまとめの前に骨子を公表したという。両団体は詳細を記した提言を近日中に発表する予定。

●臨床研修は出身大学の地域で
緊急提言の骨子で提案されているのは(1)医師キャリア支援センター構想、(2)医師の地域・診療科偏在の解消策、(3)新たな医学部設置の差し止めと医学部入学定員の削減─の3点。
このうち(1)は、すべての医師の異動を生涯にわたって把握する「医師キャリア支援センター」を各大学に設置するという案。学部教育から臨床研修、専門医取得、生涯学習まで医師の相談に乗り、キャリア形成を支援する。各都道府県に設けられた地域医療支援センターと情報共有を行い、地域の医師会や医療機関とも連携。全国組織として「全国医師キャリア支援センター連絡協議会(仮称)」を創設する。
また、臨床研修は出身大学のある地域で行うことを基本とする。ただし、それ以外の地域で研修を受けても罰則はない。「出身大学のある地域」は、出身大学の関連病院のある範囲を含むとしている。

●管理者の要件に医師不足地域の勤務
(2)の偏在解消策として提言しているのが、医師キャリア支援センター設置を前提に、医師不足地域で一定期間勤務した経験があることを診療所・病院の管理者の要件に導入する案。医師不足地域の範囲や勤務の期間は、都道府県の地域医療支援センターと自治体が偏在の状況を踏まえて指定。医師不足地域は必ずしもへき地だけに限らない。
その上で、地域医療支援センターが地域の現時点と将来の医療需給に関するデータを把握・整備することも提案。需給データを各大学の医師キャリア支援センターが医師・医学生に提供し、医師数が地域・診療科ごとに適切な配置へと自主的に収斂されていくことを目指すとしている。

●成田医学部案の了承「遺憾」
(3)の新たな医学部設置の差し止めについては、「国家戦略特区で検討されている医学部を含め、新たな医学部設置を認めることはできない」と、千葉県成田市や東北地方での医学部新設に改めて反対を表明。医学部入学定員の早急な削減も求めている。
政府の東京圏国家戦略特別区域会議の成田市分科会が7月、医学部新設案を了承したことについて、日医の横倉義武会長は19日の会見で「大変遺憾に思っている」と述べた。

【記者の眼】医師キャリア支援センターは「自校教育を行い、スクールアイデンティティと地域への愛着を育む」との記載も。アイデンティティや愛着は教育で作られるものではなく、自然と心に生まれるものではないか。(K)

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