(概要) 次期改定の入院医療を巡る論点が整理された。急性期では「重症度、医療・看護必要度」のA項目を重視。地域包括ケア病棟は在宅急変時対応の評価などがポイントとなる。
次期2016年度診療報酬改定に向け、入院医療を巡る議論が本格化してきた。9日に開かれた中央社会保険医療協議会基本問題小委員会(田辺国昭委員長)では、「入院医療等の調査・評価分科会」の中間とりまとめを基に議論。今後は、7対1入院基本料をはじめとする急性期医療の適切な評価に向けた「重症度、医療・看護必要度」の見直しや、14年度改定で新設された地域包括ケア病棟の機能に見合った評価のあり方などが主な論点となる。
●患者の状態を示すB項目は整理、入れ替えへ
7対1の病床数は、改定前(2014年3月)の約38万床から2015年4月時点で約1万6000床の減少にとどまり、16年度改定ではさらなる適正化が図られることは確実だ。
7対1の適正化でポイントとなるのは、14年度改定で見直された「重症度、医療・看護必要度」。7対1の場合、A項目(専門的な治療・処置)とB項目(寝返りや起き上がりの可否など患者の状態)の基準を満たす患者が15%以上であることが要件だが、中間とりまとめは、手術直後や救急搬送後などの患者が「基準を満たさないことも多い」と指摘した。このほか、(1)「A項目2点以上の患者」が多い医療機関は高度な治療の実施件数が多い、(2)特定機能病院はA項目の該当患者割合が高い、(3)B項目により術後の早期離床が進めにくい─など問題点を整理。
今後はA項目を重視する一方、B項目は認知症患者の増加を踏まえ、「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」の追加など項目の入れ替えが検討される。
●手術料や麻酔料の包括化の是非が論点
14年度改定で新設された「地域包括ケア病棟」については、機能に見合った評価のあり方が課題となる。中間とりまとめは、地域包括ケア病棟の状況を分析(別掲)したが、ポイントは在宅患者の急変時対応を期待されているにもかかわらず、手術がほとんど実施されていないという点。今後は、包括されている手術料や麻酔料の出来高化が検討される。
地域包括ケア病棟入院料ではリハビリテーションも包括されているが、リハビリは患者の状態に応じて提供されているようだ。また、在宅復帰率も高い水準にあり、急性期後の受け入れや在宅復帰支援の機能は一定程度果たしているとみられる。
●外来の機能分化の必要性も指摘
このほか次期改定関連では、11日に社会保障審議会医療保険部会(遠藤久夫部会長)が開かれ、改定の基本方針策定に向けた方向性が確認された。医療機能の分化という視点では、病床に加え外来の機能分化の必要性も指摘。また、病床機能報告制度を巡り、診療報酬上の区分と同制度の4機能をどうリンクさせるかも将来的な課題とされた。
【記者の眼】「重症度、医療・看護必要度」のA項目を重視、B項目を整理という方向性は現場感覚とも概ね一致するものだが、7対1病床の削減効果は限定的だろう。さらなる削減に向けた取り組みとして、「15%以上」の要件が見直される可能性も十分にある。(T)