(概要) 次期改定率は全体マイナス0.84%で決着したが、過去の改定と経年比較ができる「実質」ではマイナス1.03%。2回連続でマイナス幅が1%を超える結果となった。
12月21日に行われた塩崎恭久厚生労働相と麻生太郎財務相の閣僚折衝の結果、2016年度の診療報酬改定率は本体がプラス0.49%、薬価と材料価格はそれぞれマイナス1.22%、マイナス0.11%となり、全体(ネット)はマイナス0.84%で決着した。
しかし、次期改定では年間売り上げが1000億円を超える医薬品に対し、特例的に薬価を最大50%まで引き下げる市場拡大再算定ルールの見直しが予定されていることから、これまで改定率に含まれていた現行の市場拡大再算定分(国費約200億円)を改定率の計算から除外。200億円は改定率0.19%に相当するため、「実質」のネット改定率はマイナス1.03%となった。
改定の財源は本体が国費500億円、医療費ベースに換算すると約2100億円となる見込み。
前回14年度改定は、消費税率引上げに伴う対応分を除くと本体プラス0.1%、ネットマイナス1.26%だったため、実質的には2回連続のネットマイナスとなった。
●塩崎厚労相「それなりの成果」強調
財務省は政府の『骨太方針2015』に基づき社会保障費の伸びを年間5000億円程度に抑制するため、ネットマイナスはもちろん診療報酬本体でもマイナス改定を求めていたが、本体では0.49%のプラスとなった。
この結果について塩崎厚労相は、「厳しい財政事情の中、医療機関の経営状況や医療従事者の賃金動向などを考慮した。より良い医療を確保するという意味において、それなりの成果だったと思う」と今回の成果を強調した。実質では2回連続のマイナス改定となったことについては、「重要なのは本体。前回の0.1%(プラス)からすると約5倍の財源を確保した」との見解を示した。
●横倉会長、薬価財源の充当額「残念」
一方、改定率決定後に会見した日本医師会の横倉義武会長は「最終的にプラス0.49%となったことは、一定の評価をしたい。しかし、今回の改定でも薬価改定財源の半分以上が診療報酬本体に充当されなかったことはきわめて残念」との考えを示した。その上で、日医としての狙いは、当初マイナス1.5%を想定していた薬価引下げ分の約半分に当たるプラス0.75%だったことを明らかにした。
横倉会長は次期改定の具体的配分について「基本診療料をはじめ、人件費、技術料が包括されている項目に重点配分されることが重要」と強調した。
前回改定に比べ穏やかな決着となった次期改定率。しかし、前回の消費税対応と同様に、薬価制度改革における約500億円が「別枠」とされるなど、今後の改定率は従来とは見方を変える必要がありそうだ。(T)