(概要) 中医協総会は3日、次期2016年度診療報酬改定を巡る議論を終了した。10日には塩崎恭久厚労相に答申され、具体的な点数設定が明らかとなる。
懸案となっていた7対1入院基本料の施設基準を巡っては、1月29日の会合で最後の議論が行われた。『個別改定項目』案(10頁)に盛り込まれた7対1の見直しの中で、医療機関に影響が大きいのは、「重症度、医療・看護必要度」の見直しだ。項目案では、急性期の患者像を示す指標として、A項目(モニタリングや処置など)に「救急搬送」「無菌治療室での治療」を追加。B項目(患者の状況など)には認知症患者への対応として「危険行動」「診療・療養上の指示が通じる」を追加し、手術などの医学的状況を表すM項目を新設する。M項目には1月22日の公聴会での「外科系が有利になる」との指摘を受け、新たに「救命等に係る内科的治療」が盛り込まれた。
●重症患者割合の基準がカギ
争点となったのは基準を満たす重症患者割合について。現行基準は「15%以上」だが厚生労働省は「25%以上」を想定している。中川俊男委員(日医)はM項目新設を評価した上で「20%台前半」を要望した。
一方、幸野庄司委員(健保連)は、M項目に内科的治療が追加されたことで「厚労省の試算よりも対象患者が増加する」と指摘。「25%よりもできるだけ高く30%近い数字」まで引き上げるよう求めた。
●「平均在院日数は年々短くなっている」
数回にわたり激しい応酬が続いた7対1の平均在院日数の短縮については、個別改定項目にも盛り込まれず、次期改定では見送られることとなった。幸野委員は「厚労省の調査でも平均在院日数の長い7対1では診療密度が低いことが明らかとなっている。重症患者割合と併せて厳格化すべき」と従来の主張を改めて強調。これに対し、中川委員は「診療密度が低ければ医療費も低いということ。しかも在院日数は年々短くなっている傾向にあり、政策で誘導する必要はない」と述べた。
●一部の陽子線、重粒子線治療が保険適用に
このほか次期改定で新たに保険適用となる14技術の保険導入も決まった。放射線治療の一種である粒子線治療のうち、小児腫瘍に対する陽子線治療と切除非適応の骨軟部腫瘍に対する重粒子線治療が保険適用となる。それ以外の適応症については、引き続き先進医療として実施する。
また、次期薬価制度改革で市場拡大再算定ルールに新設される「特例拡大再算定」の対象品目も固まった。同制度は、年間販売額が1000億円超の「売れすぎた」医薬品の薬価について最大50%引き下げる仕組み。高薬価が話題となったC型肝炎治療薬「ソバルディ錠」「ハーボニー配合錠」など4成分に適用された。新薬価は3月上旬に告示予定。
【記者の眼】次期診療報酬改定は間もなく答申を迎える。昨年末の改定率は診療側に厳しい数字となったが、改定の内容はドラスティックな見直しは影を潜め、もちろん点数配分次第ではあるが、概ね診療側の納得がいく決着となったようだ。(T)