【概要】政府の『骨太方針2016』の素案に、「規制的手法」を含めた医師の地域・診療料偏在対策の検討を進めるとの方向性が盛り込まれた。これについて日本医師会の横倉義武会長は「これまでの対応の方向性と比べて、かなり踏み込んだ内容になっている」との印象を語った。
塩崎恭久厚生労働相は11日の経済財政諮問会議に、医師偏在の解消に向けて検討を進める対策(表)を提示。18日に示された『骨太方針2016』の素案では、一定の「規制的手法」を含めて検討するとの方向性が明記された。
これらは、同省の「医療従事者の需給に関する検討会」などの議論を踏まえたもの。同検討会は年内にも具体的な偏在対策をとりまとめる予定だ。
●「医師の選択の自由」を条件付き制限
これまで厚労省が行ってきた医師確保対策は、医師の診療科・勤務地の選択の自由が前提だった。医師不足が指摘されている小児科・産科には診療報酬上の評価、過疎地域の病院には地域医療支援センターによる医師の斡旋といった形の対応だ。一定の要件の下とはいえ、政府の最重要方針の中で、規制を含めた検討の方向性が示されることは、偏在対策の転換点となりうる。
管理者要件にへき地など特定の地域・診療科への勤務を設ける案は、元は日医と全国医学部長病院長会議が昨年12月に発表した合同提言に盛り込まれたものだ。合同提言では、各大学が卒業生の異動を生涯にわたって把握する「医師キャリア支援センター」を設置する構想も描かれている。
これらを踏まえ、横倉会長は20日に都内で行った講演で、「今回の偏在是正策の方向性はかなり踏み込んだ内容」と評価。医師キャリア支援センター構想にも触れ、医師のキャリア形成を一貫して支援することを通じて、あるべき医師配置数に近づけられると指摘。医療団体・大学の主導で偏在対策を進めるべきとの考えを示唆した。