【Q】
肝静脈根部に腫瘍が存在するような切除困難な症例では,体内肝冷却灌流によるante-situm法が採用される場合があります。しかし,本法はその技術的な難易度の高さのためか報告例も少なく,合併症率や術関連死亡率など蓄積されたデータはないようです。また,肝臓を体外に一度取り出してex vivo法で切除し,体内に戻す手術も,前述のような状態では適応になるかと思いますが,両者の使いわけなども不明です。そこで,秋田大学・山本雄造先生に,ante-situm法の短期・長期成績,適応,有用性,問題点についてお尋ねします。【A】
ante-situm法と体外冷却保存下肝切除(ex vivo法)との大きな違いは,肝動脈の切離・再建と,胆管の切離・再建の有無です。1988年にPichlmayrが発表したex vivo法は腫瘍の存在部位にかかわらず,複雑な切除も可能にします。しかし,術後の高い肝不全死亡率が指摘されています。2000年にPichlmayr門下のOldhaferがex vivo法の成績をまとめ,肝不全の原因として,肝動脈再建と胆道再建のトラブルを挙げています。