I君(当時33歳)の当科初診は2003年。診断は、乾癬性紅皮症と乾癬性関節炎であった。彼は、痩せて背の高い、眼光鋭く、何者も寄せつけないような、暗い雰囲気の青年だった。
I君は、19歳時に四肢に小紅斑が出現、心配になって受診した皮膚科医に「これは尋常性乾癬で一生治りません」と言われ、精神的にショックを受けた。どうせ治らないならと、治療意欲のないまま医療機関を転々とするうち皮疹は悪化し、激しい腰痛も出現した。何とか仕事を続けていたが耐えきれず、25歳時に退職。治療も中断したため皮疹が拡大して紅皮症の状態となり、その頃からひきこもり生活となった。その間、重篤な関節症状が出現し、起床時に体を起こすことも、箸でうどんをつまむことさえも困難になった。
乾癬という疾患が、未来ある青年の人生をここまで変えてしまったこと、彼の不安や孤独、身体的・精神的苦痛を思うと胸が痛んだ。私は思わず、「頑張って治療しましょう。近々乾癬の患者会の学習会や交流会があるから行ってみませんか」と声をかけた。しかし、「僕はそんな同病相哀れみ、傷をなめ合うような会には行きたくない」と、彼の反応は素っ気なかった。私は心の中で、「患者会はそんなものじゃないよ」と呟いた。
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