No.4775 (2015年10月31日発行) P.67
長面川さより (株式会社医療情報科学研究所代表取締役)
登録日: 2015-10-31
最終更新日: 2016-12-14
【Q】
臍ヘルニアのため来院した児が次の月にかぜ(急性喉頭炎)で受診したとき,臍ヘルニアの病名でデータが残っていたため,再診の扱いになることがありました。ヘルニアが治癒するには何年もかかるので,その間に患者がほかの病気で受診しても再診の扱いになることは納得しがたいのですが,なぜでしょうか。
また,このような患者に対する初診料の請求を認めてもらうにはどうすればよいのでしょうか。
(高知県 T)
【A】
ある疾病において治療を継続している間に,新たな別の疾病が発症した場合,その疾病の初めての診察(初診)であっても,原則初診料は算定できないことになります(診療報酬点数表 第1節初診料注5)。
ご質問のように再診の扱いとなってしまった理由は,臍ヘルニアの疾病で継続治療中に新たな疾患が発生したためと考えられます。
ただし,以下は別途初診料が算定できる内容になります。
[1] 治療中の疾病が,治癒または中止の転帰となっている。
[2] 患者が任意に診療を中止し,1カ月以上経過した場合は初診料として算定できる(一部慢性疾患等は除くが,喘息やてんかん等一発作期間をもって,一疾病として,その都度,初診料の算定が可能)。
[3] 同一日の診療で,各々診療科が異なる(別々の医師が)診療を行った場合は,互いに関連のない疾患であれば,2科目は同日複数科初診料の算定ができる。
たとえば,生後3カ月の乳児に,診療所の同一医師により次のような診療を行った場合のケースを2つ考えてみたいと思います。
《ケース1》
(1)8月3日:臍ヘルニアにて受診(診療時間内 初診)。患部は経過観察となる。
6歳未満の乳幼児初診料357点+乳幼児育児栄養指導料*130点=487点
(2)9月8日:急性咽頭炎にて受診(診療時間内 初診)。投薬(院外処方せん発行)。
新たな6歳未満の乳幼児初診料357点+乳幼児育児栄養指導料130点+処方せん料(3歳未満の乳幼児加算)71点=558点
*B001-2-3 乳幼児育児栄養指導料(130点)は,施設基準の届出は不要。3歳未満の乳幼児の初診時に育児・栄養等の療養上の指導を行った場合の算定となり,請求漏れやカルテ記載漏れなどが発生しやすい項目となる。小児科(小児外科)を標榜する小児科医師への対価となり,算定は「初診時」のため,傷病名の転帰や整理に留意が必要となる
この場合,8月3日の臍ヘルニアの患部そのものは治癒していませんが,当院にて治療継続を要することではないため,「中止」の転帰となります。
《ケース2》
(1)8月3日:臍ヘルニアにて受診(診療時間内 初診)。患部に臍ヘルニア圧迫療法を行う。実施方法等,具体的な指導管理を行う(投薬省略)。
6歳未満の乳幼児初診料357点+乳幼児育児栄養指導料130点+臍ヘルニア圧迫指導管理料100点=587点
そのほか,複数回受診(再診)となり,同処置を行い,患部の状態観察,在宅での状況確認を行う。
(2)9月5日:状態良好,治療終了とし,経過をみる(再診料省略)。
(3)9月8日:急性咽頭炎にて受診(診療時間内 初診)。投薬(院外処方せん発行)。
新たな6歳未満の乳幼児初診料357点+乳幼児育児栄養指導料130点+処方せん料(3歳未満の乳幼児加算)71点=558点
この場合,9月5日にて,本治療は経過良好の上,一時終了となり「治癒」の転帰となるため,同月の9月8日であっても,急性咽頭炎に新たな初診料の算定ができます。なお,(1)について9月8日時点において継続治療が必要な場合は,9月8日の急性咽頭炎は再診料の扱いとなります。
3歳未満の乳幼児の診療に関しては,院内で収入の検証を行う必要があります。
前述のケース1・2ともに診療行為の項目各々の点数を算定する,出来高算定です。表1のように施設基準の届出が必要なB001-2小児科外来診療料の包括点数の算定があります。ケース2の臍ヘルニアの算定日以外は,包括であっても表中の点数が高点となります。出来高のレセプトを包括に置き換えて算した場合,小児科外来診療料の算定が有益な医療機関もありますので,ご確認下さい。傷病名の転帰は同様の考え方です。