私が君に初めて会ったのは14年前。君はまだ生まれたばかりで、片手に乗るくらい小さな赤ん坊だった。ある大学病院の形成外科医からの紹介状がついていて、病名は「両側単指症」となっていた。なんと大げさな病名やらと思ったが、紹介状の欄外には自筆で「私には手も足も出ません」と書いてあった。そして君を初めて見たとき、その大げさな紹介状の真意を理解した。
両手には指が1本ずつで、両側前腕の尺骨は欠損し、両肘とも脱臼して曲がっていた。両足とも裂足と合趾症があった。複合裂手裂足症の一種であろうとは診断したが、前腕と手の尺側列の欠損と低形成には診断のつけようがなかった。
サリドマイド児は両手が極端に短いが、正常な足の指を使ってご飯を食べたり、ピアノを弾いたりできる。しかし、君の足には指が足らず、どう育っていくのか想像もつかなかった。近くには、不安そうにご両親が立っていた。自分の未熟さを悟られないように「経過をみましょう」とだけ答え、先天性四肢障害児父母の会に入ったほうがよいとだけ伝えた。少しはご両親の不安が紛れるかもしれないと思ったからだ。
残り474文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する