最も頻度の高い播種状紅斑丘疹型薬疹では,ウイルス性発疹症と鑑別を要することが多い
ワクチン接種歴,学校・職場・家庭内における感染症の流行状況を確認する
前駆症状の有無,皮疹出現時期と薬剤摂取歴との関係を詳細に問診し,感染症や薬剤との関連性を推測する
皮疹の性状・分布,粘膜病変,発熱,表在リンパ節腫大,顔面浮腫など,診断の手がかりとなる所見をチェックする
末梢血液検査,生化学検査,尿検査,胸部X線などの一般検査とともに,薬剤添加リンパ球刺激試験やパッチテスト,ウイルス特異的抗体検査を実施する
薬疹の皮膚症状は,播種状紅斑丘疹型,多形紅斑型,蕁麻疹型,苔癬型など多彩であるが,最も頻度が高いのは播種状紅斑丘疹型薬疹である。このタイプは麻疹,風疹などのウイルス性発疹症と類似し,鑑別が困難なことが多い。診断には,代表的なウイルス性発疹症の臨床的特徴をあらかじめ知っておくことが必要で,患者の現病歴,薬剤摂取歴,皮疹の性状・分布,検査所見などの情報をもとに鑑別を進めていく。ここでは,薬疹との鑑別を要するウイルス性発疹症の主なものの特徴を示し,両者を鑑別するためにどのような所見に留意して診察を進めるかについて解説する。
播種状紅斑丘疹型薬疹と紛らわしいウイルス性発疹症には,麻疹,風疹,伝染性紅斑,伝染性単核症などがある。ウイルス感染症に加えて,溶連菌感染症も鑑別に挙がる。また,粘膜症状が強い麻疹では,稀にスティーヴンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)との鑑別を要することがある1)。手足口病も典型例では,診断は比較的容易であるが,紅斑・丘疹が全身に出現することがあり,その場合は薬疹と紛らわしい。また,多形紅斑型では,単純ヘルペス,マイコプラズマ感染などに伴ってみられるものとの鑑別を要する。単純ヘルペスによる多形紅斑では,四肢伸側や手掌足底に環状紅斑や標的状紅斑を形成することが多く,しばしば再発を繰り返す。小児のSJSでは,マイコプラズマ感染によるものが少なくない2)。
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