【質問者】
大坪天平 JCHO東京新宿メディカルセンター 精神科主任部長
双極性障害に対する抗うつ薬使用は,①急性期双極性うつ病への使用,②双極性障害への長期間の使用,③双極Ⅱ型障害への使用,の3つにわけて考える必要があります。
急性期双極性うつ病への使用は,2004年のGijsmanらのレビューで,抗うつ薬はプラセボに比べて有意に効果があり,躁転には有意差がないという結果で,当時はむしろ使用が推奨されていました。しかし,2011年のSidorらのレビュー1)では,抗うつ薬はプラセボに比べて効果も躁転でも有意差がないという結果で,現在では使用には意味がないとの解釈です。この間には,米国で行われた大規模臨床試験STEP-BD(systematic treatment enhancement program for bipolar disorder)からの,やはり双極性うつ病に対する抗うつ薬投与は効果,躁転ともにプラセボと有意差がないとの2007年のSachsらの報告2)などがあり,これを加味した結果でした。世界の各ガイドラインでも,双極性うつ病への特に抗うつ薬単剤での投与は推奨されません。なお,我々は2015年にこのSachsらの報告を用量別に再解析しましたが,低用量での抗うつ薬投与は有意に効果が劣るとの結果で,もし抗うつ薬を投与するなら高用量である必要があるが,その効果はプラセボと同等との結果でした3)。
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