ヒトゲノムに約1000万箇所存在する一塩基多型(SNP)を指標とするゲノムワイド関連解析(GWAS)によって,疾患易罹患性や薬剤応答性を規定するような遺伝因子がここ数年で次々と明らかになった。
その一番の成果はIL28BのSNPである。まったく関連が知られていなかったこの遺伝子多型が,C型肝炎に対するペグインターフェロン+リバビリン併用療法の治療効果予測に非常に有用であった(文献1)。その後導入されたテラプレビルを含む3剤併用療法の効果予測にも有用であり,治療ガイドラインにも取り入れられた。このSNPはHCVの持続感染にも関連しており,病態解明にも大きな示唆を与えている。また,これら治療に起因する貧血にはITPAのSNPが関連しており,投薬量を考慮する上で参考になる情報となった(文献2)。
一方,C型肝癌に関連するMICAやDEPDC5,NAFLDに関連するPNPLA3など,様々な病態に関連するSNPが報告された。B型肝炎・肝癌,C型肝硬変,PBCではHLAの関連が報告され,感染症・がんにおける免疫機構の重要性や,PBC発症に自己免疫機序が関わっていることが改めて示された。しかし,これらについては現在のところ臨床応用されているものはなく,今後の進捗が俟たれるところである。
1) Tanaka Y, et al:Nat Genet. 2009;41(10):1105-9.
2) Ochi H, et al:Gastroenterology. 2010;139(4): 1190-7.