従来,B型慢性肝疾患診療においては,HBeセロコンバージョンを誘導し,ALTを正常化することが重要と考えられてきた。しかし,HBe抗原陰性化後もHBV DNAが高く肝炎の持続する症例があること,HBV DNA量と肝発癌に有意な相関が認められることから,2013年9月に改訂された日本肝臓学会の「B型肝炎治療ガイドライン」では,抗ウイルス療法の目標をALT正常化(30IU/L以下),HBeセロコンバージョン,HBV DNA増殖抑制を短期目標とし,HBs抗原消失を最終目標と設定した(文献1)。
近年,HBs抗原測定は定量可能となり,測定意義も変化している。ペグインターフェロン治療中のHBs抗原量により,治療終了後のHBeセロコンバージョンやHBV DNA量,HBs抗原の消失率が予測可能であるといった報告(文献2)や,核酸アナログ治療を中止する際に,HBs抗原量80IU/mL未満かつHBVコア関連抗原量3.0Log U/mL未満であれば,治療中止後に再燃リスクが低いといった報告(文献3)もある。
B型慢性肝疾患診療において,定期的なHBs抗原定量は治療効果や再燃予測のマーカーとして意義が大きくなっている。
1) 日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会, 編:B型肝炎治療ガイドライン. 第1.2版. 2013.
2) Piratvisuth T, et al: Hepatol Int. 2011 Jun 24. [Epub ahead of print]
3) Matsumoto A, et al: Hepatol Res. 2012;42(2): 139-49.