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胆道閉鎖症

No.4704 (2014年06月21日発行) P.60

新井真理 (東京大学小児外科講師)

岩中 督 (東京大学小児外科教授)

登録日: 2014-06-21

最終更新日: 2016-10-26

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胆道閉鎖症は,胆管が進行性に消失し胆汁うっ滞性肝硬変から肝不全となり,無治療の場合には2歳前後で死に至る原因不明の疾患である。早期発見,早期治療が重要であり,生後60日以内の手術が望ましい。便色が早期発見に有用であるが,淡黄色の白色便を黄色と認識され診断が遅れる例もあったため,最近では母子健康手帳に便の比色表が掲載され,共通の認識が持てるようになった。
外科治療の第一選択の基本は1959年に報告された葛西手術で,索状の胆管遺残物を切除し肝門空腸吻合術を行う。有効な手術法であるが,減黄できない症例では葛西手術の再手術を行っていた一方で,1989年からは生体肝移植も行われるようになった。肝移植の適応や時期については議論があるが,減黄できず成長障害を認める例,減黄は得られたが難治性反復性胆管炎や治療抵抗性の消化管出血,肝不全の進行を認める例に対し肝移植を行い,最近は成績も安定してきている。
また葛西手術後,成人に達した症例の問題点も報告されている。自己肝生存でも,進行する肝機能障害による門脈圧亢進症,食道静脈瘤,脾機能亢進症などの合併症や黄疸,胆管炎の既往がある例も少なくなく,妊娠,出産を契機に肝機能が急速に悪化する場合もある。長期にわたる厳重な経過観察と迅速で適切な治療が必要であり,さらに身体的,精神心理学的,社会的問題がある場合も多いため,関連各科,心理療法士,ソーシャルワーカー,行政や福祉などとの連携も必要である。

【参考】

▼日本胆道閉鎖症研究会 編:新・胆道閉鎖症のすべて. 第4版. 胆道閉鎖症の子どもを守る会, 2013.
▼新井真理, 他:Annual Review消化器 2014. 林 紀夫, 他 編. 中外医学社, 2014, p297-302.

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