腸管不全とは,腸管機能が著しく損なわれ恒常性を維持できなくなった状態であり,疾病や外傷などによって腸が極端に短くなった状態(短腸症候群)と,長さは保たれるが腸管自体が機能しない状態(腸管機能障害)とに大別される。腸管不全例の多くは静脈栄養(parenteral nutrition:PN)が必要であるが,小児では生命維持に加えて,発育・発達分の上乗せが必要であり,PN依存度は高くなる。
腸管不全治療の基本は,可能な限り残存腸管を活用することでPN依存度を軽減し,腸管不全関連肝障害(intestinal failure-associated liver disease:IFALD),カテーテル関連血流感染症などの合併症を予防,軽減することである(文献1)。種々の内科的・外科的治療ならびに,多方面からのアプローチを組み合わせた包括的治療が必要である。このような治療戦略は,腸管リハビリテーションプログラム(intestinal rehabilitation program:IRP)と呼ばれ,その成果が報告されている(文献1)。
わが国では,nutritional support team(NST)による多職種連携の取り組みは広まりつつあるが,小腸移植を加えたIRPを持つ施設はごく限られている。また,IFALD治療の主軸として注目される静注用ω3系脂肪酸製剤も,わが国ではいまだ薬価収載に至っていないのが現状である。
1) Sudan D, et al:J Gastrointest Surg. 2005;9(2): 165-76.