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Hirschsprung病:治療法の変遷

No.4748 (2015年04月25日発行) P.56

工藤博典 (東北大学病院小児外科)

仁尾正記 (東北大学病院小児外科教授)

登録日: 2015-04-25

最終更新日: 2016-10-26

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Hirschsprung病(H病)は,便秘を主とした機能的腸閉塞疾患のひとつである。病因は,肛門から上行する腸管壁内神経節細胞の欠如により,同部の腸管運動が障害されることによる。症状は,便秘,腹部膨満などが挙げられ,腸炎や消化管穿孔により見つかる症例も認める。診断は,注腸造影・直腸肛門内圧測定・直腸粘膜生検が代表的である。病型は,無神経節腸管の長さで決定し,長さに比例し重症度も高まる。腸管神経節が欠如する範囲が,直腸以下(短域型)とS状結腸まで(classical型)の合計で全体の約8割を占める。
治療法は手術で,そのコンセプトは無神経節・移行帯腸管を切除し,神経節細胞を有する正常腸管を肛門部にpull-throughすることにある。標準術式は,Swenson法,Duhamel法,Soave法が挙げられる。昨今,短域型とclassical型に対しては,腹部操作を伴わない(または腹腔鏡を併用した)経肛門的Soave(transanal endorectal pullthrough)法が主流である。一方,長節型~全結腸型に対しては,Soave法やDuhamel法などが各施設の方針で行われている。当科では,以前はDuhamel変法の「後方三角弁法」を病型によらず行っていたが(文献1),最近ではclassical型に対しては経肛門的Soave法を,長節型以上では臍部アプローチによる後方三角弁法を施行している。
一般的には予後良好な疾患であるが,稀に無神経節部分が高位空腸・十二指腸,あるいは胃・食道にまで及ぶ極端な広範囲型で,静脈栄養からの離脱困難な腸管不全症例を認める。これらに対する治療法はいまだ確立されておらず,小腸移植を含めた包括的なアプローチが必要となる。

【文献】


1) Kasai M, et al:J Pediatr Surg. 1977;12(2):207-11.

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