心房細動は年齢とともに増加することが知られており,日本循環器学会の調査では80歳以上では女性2.2%,男性4.4%と報告されている。心房細動に対する経口抗凝固療法は半世紀にわたりワルファリンに頼ってきが,近年,新規経口抗凝固薬(NOAC)としてダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバンの4剤が使用可能となった。
第3相試験でNOACはワルファリンと比較して脳梗塞予防効果は同等かそれ以上,重大な出血発症率は同等かそれ以下,頭蓋内出血が大幅に低下することが示され,2013年の「心房細動治療(薬物)ガイドライン」では,CHADS2スコア2点以上ではワルファリンと同様に推奨されている。その優れた特質を考慮すると,腎機能低下がない場合はNOACのほうがより強く勧められる。ただ,サブ解析ではあるが,75歳以上ではワルファリンより出血合併症が増加するとの報告もあり,高齢者へのNOACの投与は慎重に行う必要がある。
高齢者ではCHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアで評価する塞栓症のリスクが上がるが,HAS-BLEDスコアで評価する出血リスクも増大する。ワルファリン治療のネットクリニカルベネフィットは,高齢になるほど増大することが知られており,NOACでも同様であると考えられる。しかしPT-INRのコントロールが良好であることが前提になっており,モニターのできないNOACは特に服薬アドヒアランスの低い高齢者での使用に注意が必要である。
高齢者のエビデンスが少ない,コストが高い,拮抗薬がない,モニターできないなどの問題点はあるが,今後の高齢者心房細動への抗凝固療法はNOACが中心になると予想される。