◉関節リウマチ治療は進歩し,標準治療もほぼ確立している。
◉わが国は,世界随一の長寿国であり,超高齢社会となっている。関節リウマチ治療も高齢者医療の中にある。治療ゴールとして,寿命のみならず,健康寿命の延伸を意識する必要がある。
◉高齢リウマチ治療は,併存症,合併症について,配慮しながら進める必要がある。
◉高齢患者の治療のための評価には,身体的機能のみならず,認知機能を含めた精神的,社会的環境を評価する必要があり,フレイルなどの概念は有用と考える。
◉治療効果を高め,様々な問題に対応するため,職種協働により治療にあたる必要がある。
わが国は超高齢社会となっている。60年ほど前の人口分布は,完璧なピラミッド型であったが,2020年には逆ピラミッド型へと大きく変化している。この状況下で,いかに社会,医療を維持していくかは大問題であり,高齢者に対する治療,医療が様々な疾患で課題となっている。
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者も高齢化が進み,2/3以上が65歳以上と推計されている1)。これに加え,RAにおいては,高齢発症関節リウマチ(late-onset rheumatoid arthritis:LORA)も増加しているとされる(図1)。LORAは多くの場合,65歳以上で発症するRAとされ,若年発症関節リウマチ(younger-onset rheumatoid arthritis:YORA)とは異なる疫学的特徴と臨床像を示す。そのため,LORAの治療は診療ガイドラインに示されているようにYORAと基本は同じであるものの,特有の治療アプローチを要すると考えられる。
本稿では,LORAの疫学,発症メカニズム,診断および治療について,最新のガイドライン,知見をもとに考えてみたい。
これまで,RAは中年女性に多くみられるとされてきた。しかし近年,LORAの発生頻度が高くなっていると報告されている。わが国においては,2002~03年においては,50歳代が発症のピークであったが,2012~13年においては,60歳代がピークとなっていると報告されている2)。米国の報告では,80歳ぐらいまでは,年齢とともにRA発症リスクは上昇するとされ3),人口の高齢化が進行する地域では発症者数も増加してくる可能性が高い。また,LORAでは発症時の性差がYORAとは異なり,男女比が均等に近い。
LORAは,YORAより高い炎症状態であること,抗CCP抗体(anti cyclic citrullinated peptides antibodies:ACPA)とリウマトイド因子(rheumatoid factor:RF)の陽性率が,YORAに比較して低いことが臨床的特徴とされる。
これらを説明するLORAの発症機序の仮説として,「免疫老化(immunosenescence)」と呼ばれる加齢による免疫系の変化の関与が提唱されている4)。老化によって免疫システムは炎症性サイトカイン(IL-6など)の産生が増加し,これが関節炎症を引き起こす要因となる。さらに,加齢に伴う自然免疫系の活性化や獲得免疫系の変容も,LORAの発症リスクを高めると考えられる。