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全身性動脈硬化性疾患(polyvascular disease)

No.4765 (2015年08月22日発行) P.47

栗栖 智 (広島大学循環器内科)

登録日: 2015-08-22

最終更新日: 2016-10-26

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近年,日本人の食生活をはじめとする生活習慣の欧米化,過食,運動不足,高齢化に伴って,動脈硬化関連疾患である心筋梗塞や脳卒中は増加の一途をたどっている。これら心血管イベントの抑制のためには,冠動脈のみならず頸動脈,腎動脈,下肢動脈の病変を,全身性動脈硬化性疾患(polyvascular disease)という概念で理解し,包括的に管理することが重要であると認識されるようになった(文献1)。
REACH Registry(文献2)では,下肢動脈疾患患者の44%が冠動脈疾患もしくは脳血管疾患を合併していることが明らかとなった。間欠性跛行患者の5年予後をみてみると,肢切断に至るのは1~3%にすぎないものの,死亡率は20~30%にも及び,その70%程度は心血管疾患によるものである(文献3)。
下肢動脈や頸動脈を全身血管の“窓”ととらえ,ABIや血管エコーを用いた検索がpolyvascular diseaseの早期診断にもつながる。診断がなされたならば,生命予後に十分配慮し,危険因子の改善,薬物治療の介入を早期から考慮すべきである。
血行再建術を含めた全身血管管理のためには,診療科の枠を越えた連携も必要である。

【文献】


1) Yakubov S:Curr Med Res Opin. 2009;25(11):2631-41.
2) Yamazaki T, et al:Circ J. 2007;71(7):995-1003.
3) Kobayashi M, et al:Jpn Circ J. 2000;64(12):925-7.

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