写実主義文学を大成した19世紀フランスの作家フローベール(1821〜80)が1869年に発表した自伝的小説。『ボヴァリー夫人』(1857年)と並ぶ代表作とされる(ギュスターヴ・フローベール 著、生島遼一 訳、岩波書店、1971年刊)
この本を最初に読んだのは20代前半、フランス文学を志していた頃のように思う。結局、フランス文学は挫折して医学部に入学したので、この本の思い出は何ともほろ苦いのだが、私に小説とは何か、文学とは何かを教えてくれた作品である。
長編小説だが一気に読めてしまう。最初に読んだときは3日間で読み終えた。30代でも40代でも読んだように思う。読むたびに新たな感慨がわく。ストーリーは至って単純。副題「ある青年の物語」からもわかるように、主人公の青春時代が描かれ、旧友と「あの頃が一番良かった」と語り合って終わる。19世紀パリの2月革命期が時代背景になっている。
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