脳深部刺激療法(DBS)は,パーキンソン病(PD)に対する確立した治療として認知されている。PDのみならず,本態性振戦,ジストニアなどの疾患への有効性も既に示されている。また,2013年のEARLYSTIM study(文献1)の結果から,従来考えられていたよりもさらに早期からのDBSの導入が,より良い患者予後をもたらすことがわかってきた。
PDに対するDBSのターゲットとしては,古くは視床,現在は視床下核ないしは淡蒼球内節が選択されていた。しかし,すくみ足などの歩行障害の改善などにはいずれのターゲットも不十分であった。それに対し近年,脚橋被蓋核(PPN)をターゲットとしたDBSの報告がなされるようになり,その有効性について議論されている。
適応疾患に目を向けると,欧米では精神疾患に対してDBSが行われるようになってきている。特に,強迫神経症やTourette症候群,重症うつ病に対するDBSが着目されている。また,Lozanoら(文献2)はアルツハイマー型認知症に対するDBSの有用性を報告しており,今後の検証が注目されている。
さらに,デバイスの開発により,新しい刺激方法(定電流刺激やmultiprogrammingなど)が行えるようになり,また,充電式やMRI対応の刺激装置も発売されるようになった。装置全体の改良も進んできており,恩恵を受けうる患者層のさらなる拡大が期待される。
1) Schuepbach WM, et al:N Engl J Med. 2013;368(7):610-22.
2) Laxton AW, et al:Ann Neurol. 2010;68(4):521-34.