2008年9歳で転倒事故により急性硬膜外血腫を発症し脳死状態となった伊藤裕哉くんの母、華さんによる手記(伊藤 華 著、木星舎、2014年刊)
私的な読書では医療関係の本はあまり読まないが、この裕哉くんの最後の担当医が私の弟であったことから、この本を手にした。
シングルマザーとその一人息子の4年間の闘病生活、そして亡くなった後の日々の中で、子を失う悲しみやいのちの尊さ、ときに医療者や行政の対応についての怒りがストレートに綴られている。子を持つ親として、医療者としての両方の立場から、状況がリアルに伝わり、読んでいて心が苦しくなる。
「教科書に書いてあることしか言わない医師が増えて残念」「医療者は患者・家族の心のケアもしてほしい」「脳死は人の死じゃない」というお母さんの心の叫びが胸に刺さる。私たち医療者は日々、人の生死に関わっているが故に、その状況に慣れすぎているのかもしれない。
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