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先天性門脈体循環シャントの治療の現状  【開腹や腹腔鏡による結紮閉鎖や,血管内治療でのコイル塞栓が行われている】

No.4803 (2016年05月14日発行) P.49

高間勇一 (大阪大学小児成育外科)

奥山宏臣 (大阪大学小児成育外科教授)

登録日: 2016-05-14

最終更新日: 2016-10-26

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先天性門脈体循環シャント(congenital portsystemic shunt:CPSS)は,先天的に門脈から下大静脈や腎静脈などの体循環にシャントを形成している疾患である。CPSSには,静脈管開存症によるものと異常なシャント血管が存在することによるものとがある。新生児期に施行される先天性代謝異常症検査により,高ガラクトース血症で発見されることも多い。肝内CPSSと肝外CPSSとがあり,肝内CPSSでは生後1~2年で自然閉鎖することが多い。完全な肝内門脈無形成のCPSSは肝移植が唯一の治療法であるが,最近の画像検査の進歩で,完全な門脈無形成のCPSSは少ないと考えられている。自然閉鎖しない場合はシャント閉鎖を考慮する。
CPSSの症状は,シャント血流量により無症候性から有症状例まで多岐にわたる。高アンモニア血症,肝機能異常,脳内マンガン沈着などの有症状例は治療介入が必要と考えられるが,現在のところ,まだ治療適応の基準は確立しておらず,症例ごとの検討が必要である。
シャント血管の閉鎖方法としては,開腹や腹腔鏡による結紮閉鎖(文献1)や,血管内治療によるコイル塞栓が行われている。シャント血管閉鎖の際に,筆者らの施設では,閉鎖後の門脈圧が25mmHgまで,閉鎖前後の圧較差が5mmHgまで,消化管に肉眼的にうっ血所見を認めないこと,の3点を一期的閉鎖の適応範囲としている(文献1)。

【文献】


1) 高間勇一, 他:日小外会誌. 2015;51(1):51-7.

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