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食道閉鎖症long gap症例における治療戦略 【modified Foker法の術後経過は通常の食道閉鎖と遜色なく,整容面にも優れている】

No.4815 (2016年08月06日発行) P.54

望月響子 (神奈川県立こども医療センター一般外科医長)

登録日: 2016-08-06

最終更新日: 2016-10-30

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【Q】

食道閉鎖症,特にlong gap症例は治療戦略に関して難渋することが多いと思います。当院では頸部食道瘻造設後,木村法による食道延長を施行しておりますが,術後吻合部狭窄を呈し,その治療に難渋している症例があります。近年Foker法による食道体外牽引術が報告されていますが,合併症が少なからずあります。合併症の少ないmodified Foker法を考案し,良好な治療成績を報告されている神奈川県立こども医療センター・望月響子先生に貴施設でのmodified Foker法のポイントに関してご教示をお願いします。
【質問者】
山高篤行:順天堂大学医学部小児外科・小児泌尿生殖器外科主任教授

【A】

Foker法はlong gap食道閉鎖症に対し,上部下部食道盲端にかけた糸を体外で牽引することで食道の延長を図る方法です(文献1)。頸部食道瘻を段階的に剥離造設し延長する木村法と比較し,食道壁損傷が少ないことが利点です。一方,Foker原法では盲端にかけた糸により食道が穿孔するなど合併症も報告されています(文献2)。食道壁を直接刺通して糸をかける原法の場合,牽引中に針穴が裂けてしまうことが予想されます。そこで,当院でのmodified Foker法は,食道盲端を面で支え幅広く牽引することを目的に考案しました。
まず食道盲端をセイラム サンプTMチューブで挾み,水平マットレス縫合で固定します。チューブの細い内腔のほうに左右からUの字に各々糸を通すことで,さらにチューブを食道盲端にしっかりと固定し,その糸を牽引することで,食道盲端全体に力が分散してかかり,穿孔の危険性を低下させると考えています(図1)。
下部食道は牽引しすぎると食道裂孔ヘルニアを併発するため,牽引糸を肋骨にかけ体内牽引とし,根治術(食道食道吻合)まで追加牽引は行いません。上部食道は気管との癒着が強いと牽引に難渋するため,十分に剥離し,牽引糸をできるだけ尾側の肋間から体外に引き出すことで有効な牽引距離を確保しています。牽引中は患児を軽い鎮静下に置き,ベッドサイドで連日,用手的に牽引を追加します。牽引糸は皮膚保護剤の上にターニケットとモスキート鉗子で固定し,1日2回,約5mm糸を引き出し固定し直しています(図2)。
力のかけ方は感覚的なところが大きいですが,抵抗なく引き出せるところまで,としていますので,2mmしか引き出せない場合もあります。セイラム サンプTMチューブの不透過マーカーを目印にX線で上部下部食道盲端の位置関係を確認します。上部食道には飲み込んだ空気が入りますので,サンプチューブが食道からはずれていないか,食道が穿孔していないか,の評価が可能です。根治術のタイミングは,上部下部食道のサンプチューブが接着もしくは交差したときとしていますが,牽引期間は約5~7日間であることが多いです。根治術後は通常の食道閉鎖と同様の管理を行いますが,吻合に緊張がかかりやすいため,通常より長く,3日~1週間程度鎮静します。
これまでの当院の成績は報告しておりますが(文献3),根治術後のメジャーリークはなく,早期に経口摂取が確立され,噴門形成を要する例が多いことを除けば通常の食道閉鎖と遜色ない経過となっています。また,本法は根治術時と同じ腋窩切開と体外牽引の引き出し創のみの術創であり,牽引創は根治術時のドレーン留置部と一致していますので,最小限の創部で食道を延長できるという点から,整容面にも優れていると考えます。

【文献】


1) Foker JE, et al:Ann Surg. 1997;226(4):533-41.
2) Hadidi AT, et al:J Pediatr Surg. 2007;42(10):1659-62.
3) Mochizuki K, et al:Pediatr Surg Int. 2015;31(10):937-42.

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