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浜田宏一氏が指摘した財政拡大の必要性 [お茶の水だより]

No.4832 (2016年12月03日発行) P.14

登録日: 2016-12-01

最終更新日: 2016-11-29

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▶15日付の日本経済新聞に経済学者の浜田宏一氏(米イェール大)の「減税含む財政拡大必要」と題するインタビュー記事が掲載された。浜田氏といえば、内閣官房参与としてアベノミクスを理論的に支え、金融緩和を推し進めてきた人物だ。
▶注目したいのは、財政赤字の増大が結果的にインフレを導くとするクリストファー・シムズ氏(米プリンストン大)の論文に「目からウロコが落ちた」と述べている点。その上で財政拡大が必要と指摘し、国債を含む公債を「国全体のバランスシートで考えれば民間部門の資産」との認識を示した。
▶無論どれだけ財政赤字を増やしても問題ない、と極論を述べるつもりはない。2年前小誌は財務省主計官に「自国通貨建ての国債発行による財政赤字は問題なのか」という“そもそも論”を投げかけたことがある。答えは、「今は問題ないが何かあったときに次の世代につけを回すことになる」というものだった。これは中央銀行が国債を買い支え、財務当局が金融機関をコントロールできている状況下では、浜田氏が指摘するように「借金は返さずに将来世代に繰り延べることもできる」ことを含意してはいないだろうか。
▶社会保障分野は国家予算の相当を占めているが、医療機関や介護施設などは大きな雇用創出の場でもある。通貨供給量を重視した“リフレ”政策を掲げた浜田氏が「経済学者として間違っていた」と認めたように、日本のデフレの主要因は需要不足と考えるのが妥当だ。社会保障への財政拡大は健康寿命の延伸につながり、経済の需要不足を埋める理想的な投資先といえる。政府はもう一度、財政政策に関する議論をゼロベースから真剣に検討する必要があるのではないか。

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