慶大精神・神経科の岸本泰士郎専任講師(写真)らの研究グループは11月30日に精神科領域で遠隔医療の有用性を実証したと発表した。臨床研究による実証は国内初。
グループは強迫症患者3名を対象に、通常のインターネット回線を用いたWEB会議システムで病院と患者宅を繋ぎ、恐怖の対象に少しずつ慣れていく曝露反応妨害法による心理治療を実施した結果、3名とも一定の治療効果が認められた。そのうち不潔恐怖の症例では、トイレのスイッチを直接触るといった患者単独で実行できなかった課題も、遠隔で治療者が見守っていることで実行できるようになるなど、対面よりも治療効果があったと紹介した。
グループはまた、60歳以上のアルツハイマー型認知症患者や軽度認知障害者、健常者計30名を対象に、高精細映像のビデオ会議システムを用いた改訂長谷川式簡易知能評価スケールの信頼性試験も実施。対面と遠隔とで検査スコアを比較した結果、総得点における診断一致度は「ほぼ完璧」だったとした。
会見した岸本氏は、精神科領域の遠隔医療について、「検査者や治療者の不足、外出が困難な患者の治療などの課題を解決する」と強調。今後は対象疾患や被験者数を増やした上で研究を重ね、実用化を目指すとした。