ヒルシュスプルング病に対する根治手術として,(腹腔鏡補助下)経肛門的プルスルー(pull-through)が普及してきました。外観上は手術創瘢痕が残らず排便機能を回復させることができますが,中には便失禁や頑固な便秘が続き,治療に難渋したりQOLの低下をきたすことがあります。
このような術後合併症の原因やそれに対する外科治療の適応・方法について,金沢医科大学・河野美幸先生のご教示をお願いします。
【質問者】
新開真人 神奈川県立こども医療センター外科部長
Soave法による経肛門的ヒルシュスプルング病根治術は,手術侵襲が少なく,術後排便機能が良好であることなどから広く行われるようになりましたが,術後合併症として閉塞症状(高度便秘,腹部膨満,嘔吐など),便失禁などの排便障害が少なからず生じているようです1)。
術後の排便障害に対しては,問診(詳細な排便状況),身体所見(視診,直腸診など),検査所見(注腸造影,直腸粘膜生検,直腸肛門内圧測定など)によりその原因を検索します。特に注腸造影は,腸管拡張,狭窄,肛門管便保持機能低下の有無など,原因を探る上で重要です。
閉塞症状となる器質的原因としては,吻合部やSoaveカフによる狭窄などが,機能的原因としては無神経節あるいは移行帯腸管のpull-throughや内肛門括約筋アカラシアなどがあります。狭窄に対してはブジーなどによる拡張術あるいは再手術が,無神経節部が残存する場合にはLynn手術あるいは再手術が必要となります。内肛門括約筋アカラシアにはボツリヌス療法が有用であるとの報告があります2)。
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