今ほど、多方面から医療(診療)の質が問われていることはないだろう。質に関する情報が多くありながら、整理整頓が行われずに、必要な情報がタイムリーに手元にないという結果になっている。「情報のないものは評価できない」のであり、情報の標準化と見える化・共有化が必要な所以である。
診療の基本である病名について見ると、20世紀前半までの日本には「心不全」という死因が非常に多く、本当の死因がわからないという不具合があった。このような問題を解消し、医療の質を高めるため、国際的に統一した死因・疾病の分類の必要性がいわれ、国際疾病分類(ICD)が1900(明治33)年に初めて国際会議で承認された。日本もこの年からICDを採用している。その後、WHOで約10年ごとに改訂が行われ、最後の改訂であるICD-10は1990(平成2)年に承認されている。
わが国では、ICD-10に準拠した「疾病、傷害及び死因の統計分類」を作成し、統計法に基づく統計調査に使用するほか、医学的分類として医療機関における診療録の管理やDPCなどにおいて広く利用されている。その後、保健医療環境の大きな変化、ICTの進歩などの多くの要因から、長い時間をかけてICD-11改訂に向けた丁寧で広範な活動が行われ、ようやく改訂の道筋が見えてきた。この間、日本病院会は改訂の重要性に鑑み、2005年から11年間、WHOに対する財政的支援(年間30万ドルの支援)を行ってきた。
2016年10月8日から14日まで、東京で多くのご支援・ご協力を得て、日本病院会の強い関わりで診療情報関連4学会が合同で開催された。ICD-11改訂会議、WHO国際統計分類ネットワーク年次会合、診療情報管理協会国際連盟第18回国際学会、それに第42回日本診療情報管理学会学術大会である。この会に、来年職を引かれるWHOのマーガレット・チャン事務局長が、公式最後の日本訪問として出席され、2018年のICD-11正式公開について言及された。同時に10年余にわたる日本病院会の貢献に対する高い評価と謝意を述べられた。
あまり日本のマスコミでは取り上げられることはなかったのだが、今回の改訂の意義は計り知れないものがある。今後のわが国の医療制度改革においても、情報の有効な利活用は、重要なキーワードとなることは確実であろう。