旭川医科大学は,1996年から国際間の遠隔医療に取り組んでいる
3D-HD映像を用いた遠隔医療支援は,国際間の医療格差を解消するための一手段として有効である
旭川医科大学が有する遠隔医療のノウハウと技術は,中国国内における医療格差の解消にも寄与している
旭川医科大学(以下,本学)では,地域間の医療格差を解消するため,地方の医療機関から送信される映像をもとに,診断や手術を支援する遠隔医療を1994年に開始した。さらに1999年には,国内初の遠隔医療センターを設立し,遠隔医療支援体制を充実させた1)2)。一方,本学眼科では,国際間における医療格差の解消もめざし,米国,中国,シンガポール,タイの医療機関とも交信を行ってきた。そして,遠隔医療センターでは,都市部と農村部の医療格差問題を抱える中国政府からの要請に応え,北京市や上海市などの4地域の病院に対して遠隔医療の運用ノウハウや技術の提供を開始した。
本稿では,本学が運用する遠隔医療システムの基本構成を紹介した後,国際間における遠隔医療の事例紹介と,その経験に基づく将来の展望について述べる。
本学が運用する遠隔医療システムの基本構成を図1に示す。このシステムは,検査機器や手術顕微鏡などにビデオカメラを取りつけ,患部の映像をビデオ会議システムでリアルタイムに伝送するものである。最近では,より高品質な映像を伝送できるように高精細(high definition:HD)映像に対応したビデオカメラやビデオ会議システムを導入する医療機関が増えており,さらに眼科では,2台(左目用と右目用)のHDビデオカメラで撮影した立体映像をリアルタイムに伝送できる3D-HD遠隔医療システムも運用している。
遠隔医療ネットワークは,1994~2004年まではサービス総合ディジタル網(ISDN)のinsネット64とinsネット1500により形成していたが,2005年以降は光回線を使用しており,さらにvirtual private network(VPN)サービスを利用することで情報通信のセキュリティを確保している。
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