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皮膚筋炎と抗ARS抗体【抗ARS抗体症候群は抗体ごとに臨床症状が少し異なる】

No.4841 (2017年02月04日発行) P.57

濱口儒人 (金沢大学皮膚科准教授)

登録日: 2017-02-02

最終更新日: 2018-11-27

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抗ARS抗体はアミノアシルtRNA合成酵素に対する自己抗体で,これまでに抗Jo-1抗体,抗EJ抗体,抗PL-7抗体,抗PL-12抗体,抗OJ抗体,抗KS抗体,抗Ha抗体,抗Zo抗体の8種類が報告されている。このうち,抗Ha抗体,抗Zo抗体は1例報告である。抗ARS抗体は抗細胞質抗体である。これらの抗ARS抗体陽性の患者は,筋炎,間質性肺炎,発熱,レイノー現象,関節炎を共通する臨床症状として有することから,抗ARS抗体症候群と呼ばれている。また,共通する皮疹としてメカニクスハンド〔手指(母指と示指)側縁の角化性皮疹〕が知られる。

抗ARS抗体は90%以上で間質性肺炎を合併するが,皮疹や筋症状,関節炎の合併率は抗体ごとに少し異なっている1)。たとえば,臨床的に皮膚筋炎と診断される頻度は抗Jo-1抗体,抗EJ抗体,抗PL-7抗体で高い。一方,抗KS抗体陽性患者の多くは皮疹,筋炎ともに合併せず,間質性肺炎と診断されている。抗PL-12抗体も筋炎を合併する頻度は低い。合併する間質性肺炎の大部分は慢性型であるが,一部で急速に進行する症例があり,注意が必要である。関節炎は抗Jo-1抗体で多い。治療反応性と再燃も抗体ごとに違いがある。抗PL-7抗体は初期治療に対する反応が不十分で追加治療を要することが多く,再燃する割合も高い。

近年,抗Jo-1抗体,抗EJ抗体,抗PL-7抗体,抗PL-12抗体,抗KS抗体の5つの抗ARS抗体を同時に測定するELISA検査試薬が開発され2),保険承認を取得し臨床に応用されている。

【文献】

1) Hamaguchi Y, et al:PLoS One. 2013;8(4):e60442.

2) Nakashima R, et al:PLoS One. 2014;9(1):e85062.

【解説】

濱口儒人 金沢大学皮膚科准教授

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