広義の血管腫は,現在のISSVA分類(International Society for the Study of Vascular Anomalies)では血管性腫瘍と脈管奇形に分類され,別疾患である。血管性腫瘍は血管内皮細胞の増殖を主体とする腫瘍性病変であり,良性,局所浸潤型,悪性に分類される。良性では乳児血管腫(いわゆるいちご状血管腫),先天性血管腫(急速退縮性/非退縮性),房状血管腫などが代表的である。
一方の脈管奇形は脈管の異常拡張や形態異常であり,主となる構成成分によって,毛細血管奇形,静脈奇形,リンパ管奇形,動静脈奇形に分類される。近年では難治性脈管腫瘍および難治性脈管奇形にmTOR阻害薬であるシロリムス内服薬が適応追加となり,治療の選択肢が増えた。
紅色~紫色調の局面,あるいは柔らかい皮下腫瘤である。房状血管腫では多毛や多汗を伴うことがある。自覚症状はないことが多いが,静脈奇形では出血や血栓を生じた場合に疼痛を訴えることがある。乳児血管腫と毛細血管奇形(単純性血管腫)は初期には鑑別が困難な場合もあるが,毛細血管奇形は出生時から存在する平坦な紅色斑であり,乳児血管腫は生後しばらくして出現し,時間とともに隆起してくる。
典型的なものでは視触診で診断可能であるが,非典型的な病変では超音波検査やMRIなどの画像検査,ダーモスコピー,病理組織検査が必要な場合もある。乳幼児の場合,検査が容易でない場合が多いが,超音波検査は簡便で非侵襲的な検査であるため,脈管奇形や血管性腫瘍を疑う場合は第一選択となる。
乳児血管腫では免疫染色で血管内皮細胞がGLUT-1陽性であるが,他の疾患では陰性であり鑑別に有用である。
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