※本稿は,延山嘉眞『酒皶診療のパラダイムシフト―適切な診断と治療のために―』の一部を抜粋・編集したものです。
酒皶の患者さんは多くのクリニックでこう言います。
「最近,何を塗っても合わないのよ」(愚痴めいた口調)
「敏感肌なんです!」(怒ったような口調)
「どこのクリニックに行っても,ぱっとしないのよ」(非難めいた口調)
「お宅のクリニックには,私に合う薬はあるのかしら?」(挑戦的な口調)
このように言われると,優しい(酒皶を診断できない)先生は,「敏感肌なんですね,大変ですよね」と患者さんに寄り添い(迎合し)ます(図9)。
しかし患者さんは治らなければ他のクリニックを受診し,「前の先生のところで,敏感肌と診断されました」と言います。
そして,多くの外用薬が試された結果,「『うちにはあなたに合う薬はありません』と言われた」と,3番目のクリニックで言います(図10)。
こうして,「敏感肌という厄介な病気で,大抵の外用薬が合わない」と固く信じた患者さんが誕生します(図11)。このような患者さんは,「敏感肌」という厄介な病気に対して,3番目のクリニックでも同じような外用薬が処方されたのを見届けて,あなたのクリニックを受診します。
以上のような背景を有する患者さんが,あなたのクリニックを受診することを念頭に置く必要があります。ちなみに,「敏感肌」は疾患ではなく主観的症状に相当します。すなわち,この主観的症状を患者さんが口にしたら,酒皶を考える必要があります。